笑顔というもの、“着る”ということ
コロナ禍の間の数ヶ月間、「スタイリング」というものを体験的に学ばせていただく機会を得て(※1)、
”着る”ということを深く考えるようになりました。
10代後半から生きづらく、悩みや葛藤だらけでした。恋愛にハマったり、実家から逃げ出そうと必死になったり、自分を粗末にしたりして、騙し騙し紛らわしていましたが、それでは誤魔化し切れなくなり、本やセミナーやコーチングなど30年近くも学んで、自分を掘り下げて、自分を変えようともがきました。その最中は、もう嫌だ、もういい加減終わりにしたい、一気に問題解決とかならないんだろうか、、自分の暴れる心から逃げたい一心でしたが、今となれば、それら全てが、このプログラムにつながっていたとはっきりわかることができます。
散々もがいた末、「心の働き」や「心の仕組み」、「心の力」といったもの・・今では、「心」というより、「脳」と言った方が相応しそうですけども、そういった目に見えない内面的なありようと、目に見える外面のありようが、どう関わり合っているのか、ということがクリアに見えてきた結果が、この「inner style journey」というものとして実を結びました。
inner style journeyの開発段階で、友人に体験してもらっていて、こんなことがありました。
こんなパーティ用みたいな服、そうそう着れる機会がないんだよね・・でも、なんか手放したくないのよ・・そんなふうにこぼす彼女に、こういうお洋服も、たとえば、若い子達は、普段のシーンだとこんなふうだとか、あんなふうだとか工夫してかなり独創的に着ていて、とってもおもしろいよ、それに、このお洋服めっちゃ好き、これを着ているととっても嬉しい気持ちになる、そんなご縁のお洋服なら、ちょっとお出かけするとかちょっとごはん食べに行くとかいう時に着て行ったら、そこにいる人たちや、お店の方が、わあ〜って気持ちになったり、お店やその空間に華やぎをお贈りできるよね、みたいなことを口走っていました。
それを聞いた彼女は、何かがすごく腹落ちしたようす。
それまでの笑顔がまた一層ほころんでいました。
そのお洋服というのは、黒いチュール生地で作られていて、色とりどりの刺繍のお花がふんだんに散りばめられているミモレ丈のワンピース。
ウェストで切り替えられていて、少しギャザーを寄せて、スカートがほんのりとふんわりする感じ。
結婚式に招かれた時に、自分の年齢だとこんな感じが良さそうだなと手に入れたけど、その一度しか着れていない、でも、手放せないんだよね、と彼女の言。
お花の刺繍って、やっぱり、みているだけで、触っているだけで嬉しくなります。
やわらかいチュールレースというのも、何色でも、なんだかハートをくすぐられる感じ。
全ての人がそういう反応をするわけではないとは思うけれど、
こんなワンピースを着た女性がふっと現れたら、それがどんな場でも、わぁ、すてき・・・そこにいる人たちの心が華やぐ。
なんとなく、70年代のドラマにあったようなシーンが浮かびます。
雑踏の中に、ひとり颯爽と歩いている、ウェストのキュッとしまった白いワンピースに、白いつばの広い帽子を被った女性・・
絶対に、場違いな姿ではある。浮いている、とも言える。
何かを心の奥に響いてくるような、姿。
あなたの着姿に、その場が道端でも、工事現場でも、定食屋さんや、横丁の飲み屋さんでも、わぁ・・となる。
それが少しくらいやっかみ込みでも、いいじゃない。
だって、着ている自分自身がこんなにこのお洋服を、この今を、この自分を、愛おしく感じていて、とってもしっくりしているんだもの。
たとえば・・
パーティの帰りに、2次会でファミレスや立ち飲み屋に立ち寄る、サービスエリアに立ち寄る、そんなことだってありますよね。
このパーティに着て行くならこれを着ていったらいいかな、、心から選んだお洋服を着ているなら、
もうそれは、その人の物語になっている、その日のパーティの雰囲気もまるごとその身に纏っている。
そして、それはもう、その人の”その日という人生"そのものが香っている・・
その"雰囲気"を纏ったその人が、その着姿で、どこに現れようと、それに触れる人には、何かを贈っているし、その場空間にも、何らかの華を添えている。
そんなことを考えていて、あ、これって、笑顔と一緒だな、と。
笑顔って、心から、からだ丸ごとから滲み出る笑顔と、表面的なうわべの笑顔って、感じさせるものが全く違う。
お葬式にも、笑顔がある。
亡くなった人を偲び、ああ、あいつ、いっつもアホなことばっかやってたよな・・例えば、そんなふうに、涙の合間にこぼれる笑顔は、決して場違いじゃない。
「inner style journey」でわたしたちが出会っていく着姿は、その人の全てから滲みでる、そんな笑顔のようなものだと、思うのです。
そして、
そんな着姿は、きっと、誰かの心にそっと残る“景色”にもなっていくのだと思うのです。
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※1:パーソナルスタイリングという概念を日本で初めて打ち出した草分け的存在、政近準子さんが主宰された「マインドフルファッション」の体験実践講座で、“着る”ということを体感的に学ぶ機会をいただきました。
そこから生まれた気づきのひとつひとつが、私自身の人生の歩みと重なり合いながら、このコラムのような視点へと育っていきました。
(※なお、この文章は、政近さんの提唱する「ギフトファッション」という概念とは少し異なる切り口から書かれたものですが、根底では響き合っていると感じています。)