ご飯をめし椀に盛る。
    お腹ぐあいと注意深く相談しながら。ごはんがしゃもじからほろっとめし椀に着地する。スローモーションのようにごくゆっくりと雪崩れて、めし椀の底に鎮座する。
    ごはんのうえに急いで鰹節をのせる。
醤油をかけようとすると、ゆっくりと踊る鰹節のなかに、細い枝のようなやつがいる。
    まるで尺取り虫だ。ぐらついたり、のけ反ったり、まっすぐ伸びてみたり、スピードはゆっくりなのにどうも忙しい。次に足をつける位置を探していてそうなるのか。足が着いたときの足触りの具合によるのか、足を着けたい場所着けたくない場所の判断はいったいどこでしているのか。やっと足を着けてもまた慌てて離したりして忙しくする。このおかしげな挙動は酔っぱらいのようでもあり、頼りなげで滑稽でちょっとだけ悲しい。
    これは鰹節に対してなのか、尺取り虫に対してなのか。
    我に帰る。冷めたら困る。急いで注意深く醤油を最適の量、最適の分布具合でまわしかける。ていねいに、がっつりと、食べる。
    最高においしい。
