こめど。

このごろ、父親の背中を想い浮かべることがある。やけに全体的な均等さのきれいな肌色で、おじさんの背中とは想えないつるつるさ。しかし、全体的に毛穴のぽちぽちはあって、広さも男性らしくそこそこ広い。でも、おじさん臭さがないのが凄い。

そのつるつるな面に、ミニ富士山が出現するときがある。山の2~3合目辺りから上が鼠色のグラデーションになっていて、山頂はネズミ色が一番濃く、少し固くなっている。
それを父は「こめど」と呼んでいた。
それは、脂が溜まってできるもので、ある頻度かで定期的に成長する。富士山のような形にふくれた状態になると、中の脂を出してくれと言われる。
富士山の裾野あたりを両親指で押すとふつうは割りと素直に脂がでてくる。時々、なかなか脂が出てこないときがあると、父親がキレ気味に「どんなに痛くても構わんっ、ガッと、ガッと!」といってくる。私も少しキレ気味に、背中が凹むほどガーッと押す。そうすると、中身がビャッと噴出してくることがある。まるで昔の給食のマーガリンの袋の角を凄く小さくしか切り取れず、仕方なく無理に力で押し出そうとして、細い出口からマーガリンがチュルチュルッ!というかビャッ!というか、変な感じに噴き出すのと全く同じだなと想いながら、父の背中を押し続けていたことを想い出して、笑いを噛み殺したりすることがこのごろ、ごくたまにあるのです。