想い出してはいつの間にか忘れ、また想い出してはまたいつの間にか忘れ‥を繰り返していたこの植物の名前。
先日、20年来のお付き合いのある花屋さんに久しぶりに訪れると、それがたくさん入っていた。そんな時期だ。それの花が咲き始める時期。この日も5分以上その名前を想い出そうとがんばってみたが、どうしても想い出せず。いつもならもう少し粘るが、その日は観念して店主の方にお尋ねした。花束を仕立てている彼女の代わりにアシスタントの方が少し自信なさそうに答えてくださった。「ぎぼうし‥でしたよね?」
そう!!!ニューロン繋がりました!本当は自力で繋がないと退化しそうな気がしてしまうけれど、お陰さまで物凄くすっきりいたしました。蕾が橋の欄干にある、あのぎぼしと似ているからだったんじゃないかしら‥と。ああ、そんな話を聞いたことがあったような気がする。
家の前の歩道にもその葉がたくさん生やしてあるし、母の生家、石原邸にも数株ある。それらを目にする度、必死に想い出しては忘れるを繰り返していたその花の名前がいよいよ私の脳みそにしっかりと刻まれた。
その日の帰り、家の前の植え込みの葉っぱを見て、うん、これはぎぼうし、とわかり、その後、石原邸でも、これはぎぼうし、と出てきた。
あんなに忘れていたのに、もう忘れないでいられそうだ。ああ、よかった。そういえば、母はこの花が好きだったのか、ぎぼうしの名前を母からよく聞いたなあと想い出した。
その日のぎぼうしは、ちょうど蕾の頭のところにまるでスポットが当たっているかのように夕陽が当たっていた。