11月13日「文化財の音景vol.2 反・応」ありがとうございました。

WonderPhiotoM

江戸時代さながらの造りの商家、石原邸がネオンカラーに染まりました。

企画の当初、この企画でご一緒した清水氏より「この家にない色は紫ダネ、紫色の光があったら」というようなお話しを聞き、妙に深く納得しました。おもしろそうな照明が手に入り、土間の天井の高いスペーズに紗の布を垂らし、そこへ清水氏の美しい写真を投影(上の写真はその一部です)し、ネオンカラーの照明を混ぜてみました。また、床脇と仏間の一角に施してくださった清水氏の縁起の良い「室礼しつらい」にネオンカラーの照明を当てさせていただきました。当てる前は落ち着いた雰囲気で素敵でしたが、そこにネオンカラーが加わると何とも、幻想的と

Hiroki Otusuji

言いますか、浮遊感があると言いますか、何とも刺激的な雰囲気の「室礼しつら」に。そして、床の間には、正統的であれば掛け軸などでしょうが、この家で清水氏が夫と私、ご自分を撮られたダークな雰囲気のポートレートを映写しました。写真のスライドショーなのですが、定点観察のような撮り方をしているので、映像を流しているかのような感じに観えるものでした。

元々の石原邸らしさと見たことのないような雰囲気がまだらに混在して、平素の落ち着いた色合いから一変したビビッドな空間に変身!ネオンカラーはきらびやかすぎるかと思わないでもありませんでしたが、紫を含むネオンカラーと石原邸の相性がこんなにいいとは。我々自身、嬉しい驚きでした!

ふだんから非日常の匂いのする石原邸がまたいっそう非日常的な空間に。江戸時代さながらの石原邸の空間、清水氏の縁起の良さを引き出す「室礼しつらい」と素晴らしい撮影パフォーマンスと写真、そして感性が、私の感性や私達kiRieの舞台と相まって、一種の「新しさ」を提示できた催しになったかと思っています。

 

「文化財の音景」は、毎年秋に開催される「登録有形文化財 特別公開」という催しの一貫としても行っている企画です。来年もぜひ参加させて頂いて、「文化財の音景vol.3」を開催できるように、また1年をしっかり過ごしていかなくては、と思います。

 

愛知県では、犬山市を筆頭に、各地に登録有形文化財があります。各施設が思い思い十人十色の打ち出し方を行っています。どちらも、過去から受け継がれてきた遺産である建物をどう未来に手渡していくか‥という部分で涙ぐましい工夫と努力をされています。その中で、私がお預かりしている「石原邸」(正式名称 旧石原家住宅)も広く皆さまに親しみをもって愛顧していただきたいと思い、これからも色々と実験的なことを行っていきたいと思っています。

 文化財には、江戸時代以前、第2次世界大戦以前の生活の雰囲気を残す建物が、神社仏閣を筆頭に多くあります。その中で、我が石原邸にはどんな特色があるかと考えてみると・・・ここは全く資料館的ではなく、生活の匂いが色濃く漂っていること。ろうそくを灯したり、囲炉裏や火鉢、竃などで火を使えること。サッシなどを入れず、ほぼ江戸時代のままの設えであることかと思います。そして、私のようなちょっと気ままで自由すぎる人間がお預かりしていることもその一つなのかもしれません。 

Hiroki Otsuji

なんでしょう・・・父母から生活の中で教わって来たことですが、どんなに素晴らしいもの価値あるものも使わなくっちゃ意味がない!という精神がどうも私の心身に染み付いているようです。それ故か、なるべく自由な発想で、調度品を含めてこの家をじゃんじゃん使っていただきたい、使っていく=体験していく中で、お一人お一人の独自の発想、独自の発見をどんどんと得ていただきたい、という強く想いがあります。

それには、私自身が発想したことにもどんどん形にしていくことが起点なのではないか?と。今回の企画は純粋にそれが原動力だったと思います。

 

一つのことを続けていくことは私にはどだい無理だ、というような気持ちがありました。一つのことに人生を、命を賭けてきた父は遂にからだを壊し、燃え尽き症候群のようになってしまったように私には観えました。そういう生き方が父を壊したように思え、そういう生き方をそれ故に憎んだのかもしれません。大なり小なり、何か世の中に爪痕を残せたとしても、燃え尽きてしまうような生き方に本当に価値があるのだろうか、幸せと言えるのだろうか、と。

しかし、ここ最近になって、父をみていると、とても幸せな人だと心底と思うようになりました。

 

「一つのことを続けていくこと」にも色々な形や質があるのだなと今回、はっきりと感じました。これを次回に生かし、次回をまたその次にいかせることが出来れば、その先にどんな思いも依らない景色を見ることが出来るだろうか!・・・そんな期待感が湧いてきました。そういったエネルギーを感じられたのも、こういう場所を先祖や父母が私へと手渡してくれ、そんな私を見守ってくれるたくさんの人の心があるのだと気づけたような気がします。

 

 

ご参加くださった方々がどのようなご感想やご意見を持たれたか‥すべてお聞きできるものではないでしょうが、「へ〜こんなのもありなんだ‥」などと驚いたり反応していただけるような打ち出し方をこれからもぜひともしていきたいと思っています。

「これはこういうものだ」という先入観や価値観はやはり私にもまだまだたくさんありますが、自分からそれをどんどんアップデート・アップグレードしていきたいと思っています。またそうしていけるよう様々なご縁のちからを有難くいただこうと思い直すことができています。

 

お力を頂いた皆さま、ご参加くださった皆さま、心よりありがとうございました。

今度とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。